思う時、釣瓶《つるべ》のようにきりきりと、身体《からだ》を車に引上げて、髪の雫《しずく》も切らせずに、また海へ突込《つッこ》みました。
この時な、その繋《かか》り船に、長崎辺の伯父が一人乗込んでいると云うて、お小遣《こづかい》の無心に来て、泊込んでおりました、二見から鳥羽がよいの馬車に、馭者《ぎょしゃ》をします、寒中、襯衣《しゃつ》一枚に袴服《ずぼん》を穿《は》いた若い人が、私のそんなにされるのが、あんまり可哀相な、とそう云うて、伊勢へ帰って、その話をしましたので、今、あの申しました。……
この間までおりました、古市の新地《しんまち》の姉さんが、随分なお金子《かね》を出して、私を連れ出してくれましたの。
それでな、鳥羽の鬼へも面当《つらあて》に、芸をよく覚えて、立派な芸子になれやッて、姉さんが、そうやって、目に涙を一杯ためて、ぴしぴし撥《ばち》で打《ぶ》ちながら、三味線を教えてくれるんですが、どうした因果か、ちっとも覚えられません。
人さしと、中指と、ちょっとの間を、一日に三度ずつ、一週間も鳴らしますから、近所隣も迷惑して、御飯もまずいと言うのですえ。
また月の良い晩でした。
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