、(こいし、こいし。)と泣くのでござんす。
 手足は凍って貝になっても、(こいし)と泣くのが本望な。巌の裂目を沖へ通って、海の果《はて》まで響いて欲しい。もう船も去《い》ね、潮も来い。……そのままで石になってしまいたいと思うほど、お客様、私は、あの、」
 と乱れた襦袢の袖を銜《くわ》えた、水紅色《ときいろ》映る瞼《まぶた》のあたり、ほんのりと薄くして、
「心でばかり長い事、思っておりまする人があって。……芸も容色《きりょう》もないものが、生意気を云うようですが、……たとい殺されても、死んでもと、心願掛けておりました。
 ある晩も、やっぱり蒼《あお》い灯の船に買われて、その船頭衆の言う事を肯《き》かなかったので、こっちの船へ突返されると、艫《とも》の処に行火《あんか》を跨《また》いで、どぶろくを飲んでいた、私を送りの若い衆《しゅ》がな、玉代《ぎょくだい》だけ損をしやはれ、此方衆《こなたしゅう》の見る前で、この女を、海士《あま》にして慰もうと、月の良い晩でした。
 胴の間で着物を脱がして、膚《はだ》の紐へなわを付けて、倒《さかさま》に海の深みへ沈めます。ずんずんずんと沈んでな、もう奈落かと
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