捻平に留められたので、この時まで、差開いたその舞扇が、唇の花に霞むまで、俯向《うつむ》いた顔をひたと額につけて、片手を畳に支《つ》いていた。こう捻平に声懸けられて、わずかに顔を振上げながら、きりきりと一まず閉じると、その扇を畳むに連れて、今まで、濶《かっ》と瞳を張って見据えていた眼《まなこ》を、次第に塞《ふさ》いだ弥次郎兵衛は、ものも言わず、火鉢のふちに、ぶるぶると震う指を、と支えた態《なり》の、巻莨《まきたばこ》から、音もしないで、ほろほろと灰がこぼれる。
捻平|座蒲団《さぶとん》を一膝《ひとひざ》出て、
「いや、更《あらた》めて、熟《とく》と、見せてもらおうじゃが、まずこっちへ寄らしゃれ。ええ、今の謡《うたい》の、気組みと、その形《かた》。教えも教えた、さて、習いも習うたの。
こうまでこれを教うるものは、四国の果《はて》にも他《ほか》にはあるまい。あらかた人は分ったが、それとなく音信《たより》も聞きたい。の、其許《そこ》も黙って聞かっしゃい。」
と弥次が方《かた》に、捻平|目遣《めづか》いを一つして、
「まず、どうして、誰から、御身《おみ》は習うたの。」
「はい、」
と弱々
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