、と手練《てだれ》ぞ見ゆる、自《おのず》から、衣紋の位に年|長《た》けて、瞳を定めたその顔《かんばせ》。硝子《がらす》戸越に月さして、霜の川浪|照添《てりそ》う俤《おもかげ》。膝|立据《たてす》えた畳にも、燭台《しょくだい》の花颯と流るる。
「ああ、待てい。」
と捻平、力の籠《こも》った声を掛けた。
十八
で、火鉢をずっと傍《そば》へ引いて、
「女中、もちっとこれへ火をおくれ。いや、立つに及ばん。その、鉄瓶をはずせば可《よ》し。」と捻平がいいつける。
この場合なり、何となく、お千も起居《たちい》に身体《からだ》が緊《しま》った。
静《しずか》に炭火を移させながら、捻平は膝をずらすと、革鞄《かばん》などは次の室《ま》へ……それだけ床の間に差置いた……車の上でも頸《うなじ》に掛けた風呂敷包を、重いもののように両手で柔《やわら》かに取って、膝の上へ据えながら、お千の顔を除《よ》けて、火鉢の上へ片手を裏表かざしつつ、
「ああ、これ、お三重さんとか言うの、そのお娘《こ》、手を上げられい。さ、手を上げて、」
と言う。……お三重は利剣で立とうとしたのを、慌《あわただ》しく
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