の指に重そうな、一本の舞扇。
 晃然《きらり》とあるのを押頂くよう、前髪を掛けて、扇をその、玉簪《ぎょくさん》のごとく額に当てたを、そのまま折目高にきりきりと、月の出汐《でしお》の波の影、静《しずか》に照々《てらてら》と開くとともに、顔を隠して、反らした指のみ、両方親骨にちらりと白い。
 また川口の汐加減《しおかげん》、隣の広間の人動揺《ひとどよ》めきが颯と退《ひ》く。
 と見れば皎然《こうぜん》たる銀の地に、黄金の雲を散らして、紺青《こんじょう》の月、ただ一輪を描いたる、扇の影に声澄みて、
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「――その時あま人|申様《もうすよう》、もしこのたまを取得たらば、この御子《みこ》を世継の御位《みくらい》になしたまえと申《もうし》しかば、子細《しさい》あらじと領承したもう、さて我子ゆえに捨ん命、露ほども惜《おし》からじと、千尋《ちひろ》のなわを腰につけ、もしこの玉をとり得たらば、このなわを動かすべし、その時人々ちからをそえ――」
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 と調子が緊《しま》って、
「……ひきあげたまえと約束し、一《ひとつ》の利剣を抜持って、」
 と扇をきりりと袖を直す
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