と返事した。お三重はもう、他愛《たわい》なく娘になって、ほろりとして、
「あの、前刻《さっき》も申しましたように、不器用も通越した、調子はずれ、その上覚えが悪うござんして、長唄の宵や待ちの三味線《さみせん》のテンもツンも分りません。この間まで居《お》りました、山田の新町の姉さんが、朝と昼と、手隙《てすき》な時は晩方も、日に三度ずつも、あの噛《か》んで含めて、胸を割って刻込むように教えて下すったんでございますけれど、自分でも悲しい。……暁の、とだけ十日かかって、やっと真似だけ弾けますと、夢になってもう手が違い、心では思いながら、三の手が一へ滑《すべ》って、とぼけたような音《ね》がします。
撥《ばち》で咽喉《のど》を引裂かれ、煙管《きせる》で胸を打たれたのも、糸を切った数より多い。
それも何も、邪険でするのではないのです。……私が、な、まだその前に、鳥羽《とば》の廓《くるわ》に居ました時、……」
「ああ、お前さんは、鳥羽のものかい、志摩だな。」
と弥次郎兵衛がフト聞入れた。
「いえ、私はな、やっぱりお伊勢なんですけれど、父《おとっ》さんが死《な》くなりましてから、継母《ままはは》に売
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