相に。」と声が掠《かす》れる。
「あの……私が、自分から、言います事は出来ません、お恥《はずか》しいのでございますが、舞の真似《まね》が少しばかり立てますの、それもただ一ツだけ。」
と云う顔を俯向《うつむ》いて、恥かしそうにまた手を支《つ》く。
「舞えるかえ、舞えるのかえ。」
と女中は嬉しそうな声をして、
「おお、踊や言うで明かんのじゃ。舞えるのなら立っておくれ。このお座敷、遠慮は入《い》らん。待ちなはれ、地が要ろう。これ喜野、あすこの広間へ行ってな、内の千がそう言うたて、誰でも弾けるのを借りて来やよ。」
とぽんとしていた小女の喜野が立とうとする、と、名告《なの》ったお千が、打傾いて、優しく口許をちょいと曲げて傾いて、
「待って、待って、」
十七
「いつもと違う。……一度軍隊へ行きなさると、日曜でのうては出られぬ、……お国のためやで、馴《な》れぬ苦労もしなさんす。新兵さんの送別会や。女衆が大勢居ても、一人抜けてもお座敷が寂しくなるもの。
可いわ、旅の恥は掻棄てを反対《あべこべ》なが、一泊りのお客さんの前、私が三味線を掻廻そう。お三重さん、立つのは何? 有るもの
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