《なよ》やかに、打悄《うちしお》れた、残んの嫁菜花《よめな》の薄紫、浅葱《あさぎ》のように目に淡い、藤色|縮緬《ちりめん》の二枚着で、姿の寂しい、二十《はたち》ばかりの若い芸者を流盻《しりめ》に掛けつつ、
「このお座敷は貰《もろ》うて上げるから、なあ和女《あんた》、もうちゃっと内へお去《い》にや。……島家の、あの三重《みえ》さんやな、和女、お三重さん、お帰り!」
と屹《きっ》と言う。
「お前さんがおいでやで、ようお客さんの御機嫌を取ってくれるであろうと、小女《こおんな》ばかり附けておいて、私が勝手へ立違うている中《うち》や、……勿体ない、お客たちの、お年寄なが気に入らぬか、近頃山田から来た言うて、こちの私の許《とこ》を見くびったか、酌をせい、と仰有《おっしゃ》っても、浮々《うきうき》とした顔はせず……三味線《さみせん》聞こうとおっしゃれば、鼻の頭《さき》で笑うたげな。傍《そば》に居た喜野が見かねて、私の袖を引きに来た。
先刻《さっき》から、ああ、こうと、口の酸くなるまで、機嫌を取るようにして、私が和女の調子を取って、よしこの一つ上方唄でも、どうぞ三味線の音《ね》をさしておくれ。お客
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