様がお寂しげな、座敷が浮かぬ、お見やんせ、蝋燭《ろうそく》の灯も白けると、頼むようにして聞かいても、知らぬ、知らぬ、と言通す。三味線は和女、禁物か。下手や言うて、知らぬ云うて、曲《まがり》なりにもお座つき一つ弾けぬ芸妓《げいこ》がどこにある。
 よう、思うてもお見。平の座敷か、そでないか。貴客《あなた》がたのお人柄を見りゃ分るに、何で和女、勤める気や。私が済まぬ。さ、お立ち。ええ、私が箱を下げてやるから。」
 と優しいのがツンと立って、襖際《ふすまぎわ》に横にした三味線を邪険に取って、衝《つ》と縦様《たてざま》に引立てる。
「ああれ。」
 はっと裳《もすそ》を摺《す》らして、取縋《とりすが》るように、女中の膝を竊《そっ》と抱き、袖を引き、三味線を引留めた。お三重の姿は崩るるごとく、芍薬《しゃくやく》の花の散るに似て、
「堪忍して下さいまし、堪忍して、堪忍して、」と、呼吸《いき》の切れる声が湿《うる》んで、
「お客様にも、このお内へも、な、何で私が失礼しましょう。ほんとに、あの、ほんとに三味線は出来ませんもの、姉さん、」
 と言《ことば》が途絶えた。……
「今しがたも、な、他家《よそ》の
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