内に、
(えへん)と咳《せきばらい》を太くして、大《おおき》な手で、灰吹を持上げたのが見えて、離れて煙管《きせる》が映る。――もう一倍、その時図体が拡がったのは、袖を開いたらしい。此奴《こいつ》、寝《ね》ん寝子《ねこ》の広袖《どてら》を着ている。
 やっと台洋燈を点《つ》けて、
(お待遠でした、さあ、)
 って二階へ。吹矢の店から送って来た女はと、中段からちょっと見ると、両膝をずしりと、そこに居た奴の背後《うしろ》へ火鉢を離れて、俯向《うつむ》いて坐った。
(あの娘《こ》で可《い》いのかな、他《ほか》にもござりますよって。)
 と六畳の表座敷で低声で言うんだ。――ははあ、商売も大略《あらまし》分った、と思うと、其奴《そいつ》が
(お誂《あつらえ》は。)
 と大《おおき》な声。
(あっさりしたものでちょっと一口。そこで……)
 実は……御主人の按摩さんの、咽喉《のど》が一つ聞きたいのだ、と話した。
(咽喉?)……と其奴がね、異《おつ》に蔑《さげす》んだ笑い方をしたものです。
(先生様の……でござりますか、早速そう申しましょう。)
 で、地獄の手曳《てびき》め、急に衣紋繕《えもんづくろ》い
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