るかい。)とここで実は様子を聞く気さ。押懸けて行《ゆ》こうたってちっとも勝手が知れないから。
(先生様かね、いらっしゃります。)と何と、(的等。)の一人に、先生を、しかも、様づけに呼ぶだろう。
(実は、その人の何を、一つ、聞きたくって来たんだが、誰が行っても頼まれてくれるだろうか。)と尋ねると、大熨斗《おおのし》を書いた幕の影から、色の蒼《あお》い、鬢《びん》の乱れた、痩《や》せた中年増《ちゅうどしま》が顔を出して、(知己《ちかづき》のない、旅の方にはどうか知らぬ、お望《のぞみ》なら、内から案内して上げましょうか。)と言う。
茶代を奮発《はず》んで、頼むと言った。
(案内して上げなはれ、可《い》い旦那や、気を付けて、)と目配《めくばせ》をする、……と雑作はない、その塗ったのが、いきなり、欄干を跨《また》いで出る奴さ。」
十四
「両袖で口を塞《ふさ》いで、風の中を俯向《うつむ》いて行《ゆ》く。……その女の案内で、つい向う路地を入ると、どこも吹附けるから、戸を鎖《さ》したが、怪しげな行燈《あんどん》の煽《あお》って見える、ごたごたした両側の長屋の中に、溝板《どぶいた》の
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