た隅田川へ落ちようとしたっさ。――その話にでも嫌いな按摩が。
 ええ。
 待て、見えない両眼で、汝《うぬ》が身の程を明《あかる》く見るよう、療治を一つしてくりょう。
 で、翌日《あくるひ》は謹んで、参拝した。
 その尊さに、その晩ばかりはちっとの酒で宵寝をした、叔父の夜具の裾を叩いて、枕許《まくらもと》へ水を置き、
(女中、そこいらへ見物に、)
 と言った心は、穴を圧《おさ》えて、宗山を退治る料簡《りょうけん》。
 と出た、風が荒い。荒いがこの風、五十鈴川《いすずがわ》で劃《かぎ》られて、宇治橋の向うまでは吹くまいが、相の山の長坂を下から哄《どっ》と吹上げる……これが悪く生温《なまぬる》くって、灯《あかり》の前じゃ砂が黄色い。月は雲の底に淀《どんよ》りしている。神路山《かみじやま》の樹は蒼《あお》くても、二見の波は白かろう。酷《ひど》い勢《いきおい》、ぱっと吹くので、たじたじとなる。帽子が飛ぶから、そのまま、藤屋が店へ投返した……と脊筋へ孕《はら》んで、坊さんが忍ぶように羽織の袖が飜々《ひらひら》する。着換えるのも面倒で、昼間のなりで、神詣《かみもう》での紋付さ。――袖畳みに懐中《ふと
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