さ》えた。
「後で、よく気がつけば、信州のお百姓は、東京の芝居なんぞ、ほんとの猪《しし》はないとて威張る。……な、宮重大根が日本一なら、蕪《かぶ》の千枚漬も皇国無双で、早く言えば、この桑名の、焼蛤も三都無類さ。
 その気で居れば可いものを、二十四の前厄なり、若気の一図《いちず》に苛々《いらいら》して、第一その宗山が気に入らない。(的等。)もぐっと癪《しゃく》に障れば、妾三人で赫《かっ》とした。
 維新以来の世がわりに、……一時《ひとしきり》私等の稼業がすたれて、夥間《なかま》が食うに困ったと思え。弓矢取っては一万石、大名株の芸人が、イヤ楊枝《ようじ》を削る、かるめら焼を露店で売る。……蕎麦屋《そばや》の出前持になるのもあり、現在私がその小父者《おじご》などは、田舎の役場に小使いをして、濁り酒のかすに酔って、田圃《たんぼ》の畝《あぜ》に寝たもんです。……
 その妹だね、可いかい、私の阿母《おふくろ》が、振袖の年頃を、困る処へ附込んで、小金《こがね》を溜めた按摩めが、ちとばかりの貸を枷《かせ》に、妾にしよう、と追い廻わす。――危《あぶな》く駒下駄を踏返して、駕籠《かご》でなくっちゃ見なかっ
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