私《わっし》あ若気だ、襟巻で顔を隠して、睨《にら》むように二人を見たのよ、ね。
宿の藤屋へ着いてからも、わざと、叔父を一人で湯へ遣り……女中にもちょっと聞く。……挨拶《あいさつ》に出た番頭にも、按摩の惣市、宗山と云う、これこれした芸人が居るか、と聞くと、誰の返事も同じ事。思ったよりは高名で、現に、この頃も藤屋に泊った、何某侯《なにがしこう》の御隠居の御召に因って、上下《かみしも》で座敷を勤《し》た時、(さてもな、鼓ヶ嶽が近いせいか、これほどの松風は、東京でも聞けぬ、)と御賞美。
(的等《てきら》にも聞かせたい。)と宗山が言われます、とちょろりと饒舌《しゃべ》った。私《わっし》が夥間《なかま》を――(的等。)と言う。
的等の一人《いちにん》、かく言う私だ……」
十三
「なお聞けば、古市のはずれに、その惣市、小料理屋の店をして、妾《めかけ》の三人もある、大した勢《いきおい》だ、と言うだろう。――何を!……按摩の分際で、宗家の、宗の字、この道の、本山が凄《すさま》じい。
こう、按摩さん、舞台の差《さし》は堪忍《かに》してくんな。」
と、竊《そっ》と痛そうに胸を圧《お
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