やり》で曳《ひ》いて来い。」
と肩を張って大きに力む。
女中酌の手を差控えて、銚子を、膝に、と真直《まっすぐ》に立てながら、
「さあ、今あっちの座敷で、もう一人二人言うて、お掛けやしたが、喜野、芸妓《げいこ》さんはあったかな。」
小女が猪首《いくび》で頷《うなず》き、
「誰も居やはらぬ言うてでやんした。」
「かいな、旦那さん、お気の毒さまでござります。狭い土地に、数のない芸妓やによって、こうして会なんぞ立込《たてこ》みますと、目星《めぼし》い妓《こ》たちは、ちゃっとの間に皆《みんな》出払います。そうか言うて、東京のお客様に、あんまりな人も見せられはしませずな、容色《きりょう》が好《い》いとか、芸がたぎったとかいうのでござりませぬとなあ……」
「いや、こうなっては、宿賃を払わずに、こちとら夜遁《よにげ》をするまでも、三味線を聞かなきゃ納まらない。眇《めっかち》、いぐちでない以上は、古道具屋からでも呼んでくれ。」
「待ちなさりまし。おお、あの島屋の新妓《しんこ》さんならきっと居るやろ。聞いて見や。喜野、ソレお急ぎじゃ、廊下走って、電話へ掛《かか》れや。」
九
「持っ
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