ふ》って、
「かえって賑かで大きに可い。悪く寂寞《ひっそり》して、また唐突《だしぬけ》に按摩に出られては弱るからな。」
「へい、按摩がな。」と何か知らず、女中も読めぬ顔して聞返す。
捻平この話を、打消すように咳《しわぶき》して、
「さ、一献《いっこん》参ろう。どうじゃ、こちらへも酌人をちと頼んで、……ええ、それ何んとか言うの。……桑名の殿様|時雨《しぐれ》でお茶漬……とか言う、土地の唄でも聞こうではないかの。陽気にな、かっと一つ。旅の恥は掻棄《かきす》てじゃ。主《ぬし》はソレ叱言《こごと》のような勧進帳でも遣らっしゃい。
染めようにも髯《ひげ》は無いで、私《わし》はこれ、手拭でも畳んで法然天窓《ほうねんあたま》へ載《の》せようでの。」と捻平が坐りながら腰を伸《の》して高く居直る。と弥次郎|眼《まなこ》を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、
「や、平家以来の謀叛《むほん》、其許《そこ》の発議は珍らしい、二方荒神鞍《にほうこうじんくら》なしで、真中《まんなか》へ乗りやしょう。」
と夥《おびただ》しく景気を直して、
「姉《あんね》え、何んでも構わん、四五人|木遣《き
前へ
次へ
全95ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング