を吹込む声す。
門附の兄哥《あにい》は、ふと痩《や》せた肩を抱いて、
「ああ、霜に響く。」……と言った声が、物語を読むように、朗《ほがらか》に冴《さ》えて、且つ、鋭く聞えた。
「按摩が通る……女房《おかみ》さん、」
「ええ、笛を吹いてですな。」
「畜生、怪《け》しからず身に染みる、堪《たま》らなく寒いものだ。」
と割膝に跪坐《かしこま》って、飲みさしの茶の冷えたのを、茶碗に傾け、ざぶりと土間へ、
「一ツこいつへ注《つ》いでおくんな、その方がお前さんも手数が要らない。」
「何んの、私はちっとも構うことないのですえ。」
「いや、御深切は難有《ありがた》いが、薬罐《やかん》の底へ消炭《けしずみ》で、湧《わ》くあとから醒《さ》める処へ、氷で咽喉《のど》を抉《えぐ》られそうな、あのピイピイを聞かされちゃ、身体《からだ》にひびっ裂《たけ》がはいりそうだ。……持って来な。」
と手を振るばかりに、一息にぐっと呷《あお》った。
「あれ、お見事。」
と目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、
「まあな、だけれどな、無理酒おしいなえ。沢山《たんと》、あの、心配する方があるのですや
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