え》は出来なかったけれど、ちっともなるほどと思われるようなことはなかった。
だって、私、母様《おっかさん》のおっしゃること、虚言《うそ》だと思いませんもの。私の母様がうそをいって聞かせますものか。
先生は同一組《おなじクラス》の小児《こども》達を三十人も四十人も一人で可愛がろうとするんだし、母様は私一人可愛いんだから、どうして、先生のいうことは私を欺《だま》すんでも、母様がいってお聞かせのは、決して違ったことではない、トそう思ってるのに、先生のは、まるで母様のと違ったこというんだから心服はされないじゃありませんか。
私が頷《うなず》かないので、先生がまた、それでは、皆《みんな》あなたの思ってる通りにしておきましょう。けれども木だの、草だのよりも、人間が立ち優《まさ》った、立派なものであるということは、いかな、あなたにでも分りましょう、まずそれを基礎《どだい》にして、お談話《はなし》をしようからって、聞きました。
分らない、私そうは思わなかった。
「あのウ母様《おっかさん》(だって、先生、先生より花の方がうつくしゅうございます)ッてそう謂《い》つたの。僕、ほんとうにそう思ったの、
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