知らないで、チ、チ、チッチッてッて、おもしろそうに、何かいってしゃべっていました。それをとうとう突《つッつ》いてさして取ると、棹のさきで、くるくると舞って、まだ烈《はげ》しく声を出して鳴いてるのに、智慧のある小父さんの鳥さしは、黙って、鰌掴《どじょうづかみ》にして、腰の袋ン中へ捻《ねじ》り込んで、それでもまだ黙って、ものもいわないで、のっそり去《い》っちまったことがあったんで。
四
頬白は智慧《ちえ》のある鳥さしにとられたけれど、囀《さえず》ってましたもの。ものをいっていましたもの。おじさんは黙《だんま》りで、傍《そば》に見ていた私までものを言うことが出来なかったんだもの。何もくらべっこして、どっちがえらいとも分りはしないって。
何でもそんなことをいったんで、ほんとうに私そう思っていましたから。
でも、それを先生が怒ったんではなかったらしい。
で、まだまだいろんなことをいって、人間が、鳥や獣《けだもの》よりえらいものだとそういっておさとしであったけれど、海ン中だの、山奥だの、私の知らない、分らない処のことばかり譬《たとえ》に引いていうんだから、口答《くちごた
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