らいで、私が乳《ち》放れをするとすぐに二人とも追出して、御自分で私を育てて、十三の時までお達者だったが、ああ、十四の春だった。中風《ちゅうぶ》でお悩みなすってから、動くことも出来なくおなりで、家《うち》は広し、四方は明地《あきち》で、穴のような処に住んでたもんだから、火事なんぞの心配はないのだけれど、盗賊《どろぼう》にでも入られたら、それこそどうすることもならないのよ。お金子《かね》も少々あったそうだし。
雇いの婆さんは居たけれど、耳は遠いし、そんなことの助けにゃならず、祖父《おじい》さんの看病も私一人では覚束《おぼつか》なし、確《たしか》な後見をといった処で、また後見なんていうものは、あとでよく間違が出来るものだから、それよりか、いっそ私に……というので、親類中で相談を極《き》めて、とうとうあてがったのが今の旦那なの。
その頃ちょうど高等中学校を卒業したので、ま、宅《うち》へ来てから、東京へ出て、大学へ入ろうという相談でね、もともと内の緊《しま》りにもなってもらわなきゃあならないというんでさ、わざッと年の違ったのを貰ったもんだから、旦那は二十九で、私は十四。」
お貞は今吸子に湯
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