化銀杏
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)極《きわめ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一枚|蔀《しとみ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》りぬ
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       一

 貸したる二階は二間にして六畳と四畳半、別に五畳余りの物置ありて、月一円の極《きわめ》なり。家主《やぬし》は下の中の間の六畳と、奥の五畳との二間に住居《すま》いて、店は八畳ばかり板の間になりおれども、商売家《あきないや》にあらざれば、昼も一枚|蔀《しとみ》をおろして、ここは使わずに打捨てあり。
 往来より突抜けて物置の後《うしろ》の園生《そのう》まで、土間の通庭《とおりにわ》になりおりて、その半ばに飲井戸あり。井戸に推並《おしなら》びて勝手あり、横に二個《ふたつ》の竈《かまど》を並べつ。背後《うしろ》に三段ばかり棚を釣りて、ここに鍋《なべ》、釜《かま》、擂鉢《すりばち》など、勝手道具を載《の》せ置けり。
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