に寺あり、小高き所、堂|一宇《いちう》、継信、忠信の両妻、軍立《いくさだち》の姿にて相双《あいなら》び立つ。
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軍《いくさ》めく二人の嫁や花あやめ
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 また、安永中の続奥の細道には――故将堂女体、甲冑を帯《たい》したる姿、いと珍し、古き像にて、彩色の剥《は》げて、下地なる胡粉《ごふん》の白く見えたるは、
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卯《う》の花や縅《おど》し毛ゆらり女武者
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 としるせりとぞ。この両様とも悉《くわ》しくその姿を記さざれども、一読の際、われらが目には、東遊記に写したると同じ状《さま》に見えていと床し。
 しかるに、観聞志《かんもんし》と云える書には、――斎川以西有羊腸《さいかわいせいようちょうあり》、維石厳々《これいしげんげん》、嚼足《あしをかみ》、毀蹄《ひづめをやぶる》、一高坂也《いっこうはんなり》、是以馬憂※[#「兀のにょうの形+虫」、第4水準2−87−29]※[#「こざとへん+貴」、第3水準1−93−63]《これをもってうまかいたいをうれう》、人痛嶮艱《ひとけんかんをいたむ》、王勃所謂《おうぼついわゆ
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