。」
という。浪は水晶の柱のごとく、倒《さかしま》にほとばしって、今つッ立った廉平の頭上を飛んで、空ざまに攀《よ》ずること十丈、親仁の手許の磨ぎ汁を一洗滌《ひとあらい》、白き牡丹《ぼたん》の散るごとく、巌角《いわかど》に飜って、海面《うなづら》へざっと引く。
「おじご、何を、何をしてござるのか。」と、廉平はわざと落着いて、下からまず声を送った。
「石鑿《いしのみ》を研ぐよ。二つ目の浜の石屋に頼まれての、今度建立さっしゃるという、地蔵様の石を削るわ。」
「や、親仁御《おじご》がな。」
「おお、此方衆《こなたしゅ》はその註文のぬしじゃろ。そうかの。はて、道理こそ、婆々《ばば》どもが附き纏《まと》うぞ。」
婆々と云うよ、生死《しょうし》を知らぬ夫人の耳に、鋭くその鑿をもって抉《えぐ》るがごとく響いたので、
「もし、」と両膝をついて伸び上った。
「婆《ばば》とお云いなさいますのは。」
「それ、銀目と、金目と、赤い目の奴等《やつら》よ。主達《ぬしたち》が功徳での、地蔵様が建ったが最後じゃ。魔物め、居処《いどこ》がなくなるじゃで、さまざまに祟《たた》りおって、命まで取ろうとするわ。女子衆《おな
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