ごしゅ》、心配さっしゃんな、身体《からだ》は清いぞ。」
 とて、鑿《のみ》をこつこつ。
「何様それじゃ、昨日《きのう》から、時々黒雲の湧《わ》くように、我等の身体を包みました。婆というは、何ものでござるじゃろう。」と、廉平は揖《ゆう》しながら、手を翳《かざ》して仰いで言った。
 皺手《しわで》に呼吸《いき》をハッとかけ、斜めに丁《ちょう》と鑿を押えて、目一杯に海を望み、
「三千世界じゃ、何でも居ようさ。」
「どこに、あの、どこに居ますのでございますえ。」
「それそれそこに、それ、主たちの廻りによ。」
「あれえ、」
「およそ其奴等《そいつら》がなす業じゃ。夜一夜踊りおって[#「踊りおって」は底本では「踊りおつて」]騒々しいわ、畜生ども、」
 とハタと見るや、うしろの山に影大きく、眼《まなこ》の光|爛々《らんらん》として、知るこれ天宮の一将星。
「動くな!」
 と喝《かっ》する下に、どぶり、どぶり、どぶり、と浪よ、浪よ、浪よ渦《うずま》くよ。
 同時に、衝《つ》とその片手を挙げた、掌《たなごころ》の宝刀、稲妻の走るがごとく、射て海に入《い》るぞと見えし。
 矢よりも疾《はや》く漕寄《こぎよ
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