かあるべく見えるのであった。
夫人は、ただもの言わんとして唇のわななくのみ。
「貴女《あなた》も、昨日《きのう》、その地蔵をあつらえにおいでの途中から、怪しいものに憑《つ》かれたとおっしゃった。……
すべて、それが魔法なので、貴女を魅して、夢現《ゆめうつつ》の境《きょう》に乗じて、その妄執《もうしゅう》を晴しました。
けれども余りに痛《いたわ》しい。ひとえに獣にとお思いなすって、玉のごときそのお身体《からだ》を、砕いて切っても棄《す》てたいような御容子《ごようす》が、余りお可哀相《かわいそう》で見ておられん。
夫人《おくさん》、真の獣よりまだこの廉平と、思《おぼ》し召す方が、いくらかお心が済むですか。」
夫人はせいせい息を切った。
二十八
「どうですか、余り推《おし》つけがましい申分《もうしぶん》ではありますが、心はおなじ畜生でも、いくらか人間の顔に似た、口を利く、手足のある、廉平の方が可《い》いですか。」
口へ出すとよりは声をのんで、
「貴下《あなた》、」
「…………」
「貴下、」
「…………」
「貴下、ほんとうでございますか。」
「勿論、懺悔《ざんげ》
前へ
次へ
全96ページ中89ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング