の黒髪、解くべき術《すべ》もないのであった。
「許して下さい。お宅へ参って、朝夕、貴女《あなた》に接したのが因果です。賢君に対して殆《ほと》んど献身的に尽したのは、やがて、これ、貴女に生命を捧げていたのです。
 未《いま》だ四十という年にもならんで、御存じの通り、私は、色気もなく、慾気もなく、見得もなく、およそ出世間的に超然として、何か、未来の霊光を認めておるような男であったのを御存じでしょう。
 なかなか以《もっ》て、未来の霊光ではなく、貴女のその美しいお姿じゃった。
 けれども、到底尋常では望みのかなわぬことを悟ったですから、こんど当地の別荘をおなごりに、貴女のお傍《そば》を離れるに就いて、非常な手段を用いたですよ。
 五年勤労に酬《むく》いるのに、何か記念の品をと望まれて、悟《さとり》も徳もなくていながら、ただ仏体を建てるのが、おもしろい、工合のいい感じがするで、石地蔵を願いました。
 今の世に、さような変ったことを言い、かわったことを望むものが、何……をするとお思いなさる。
 廉平は魔法づかいじゃ。」
 と石上に跣坐《ふざ》したその容貌《ようぼう》、その風采《ふうさい》、或はし
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