懺悔」に白丸傍点]だの、露伴さんの風流仏[#「風流仏」に白丸傍点]などは、東京の評判から押して知るべしで、皆が大騒ぎでした。
あの然やう、八犬伝[#「八犬伝」に傍点]は、父や母に聞いて筋|丈《だけ》は、大抵存じて居りましたし、弓張月[#「弓張月」に傍点]、句伝実実記[#「句伝実実記」に傍点]などをよんだ時、馬琴が大変ひいきだつた。処が、追々ねツつりが厭になつたんです。けれども是は批評をするのだと、馬琴|大人《うし》に甚だ以て相済ぬ、唯ね、どうもネ。彼の人は意地の悪いネヂケた爺さんのやうだからさ。作のよしあしは別として好き、きらひ、贔屓、不贔屓はかまはないでせう。西鶴も贔屓でない、贔屓なのは京伝と、三馬、種彦《たねひこ》なぞです。何遍でも読んで飽きないと云へば、外のものも飽きないけれども、幾ら繰返してもイヤにならなくて、どんなに読んでも頭痛のする時でも、快い心持になるのは、膝栗毛です。それから種彦のものが大好だつた。種彦と云へば、アノ、「文字手摺《もじてずり》昔人形」と云ふ本の中に、女が出陣する所がある。それがネ、斯《か》う、込み入る敵の兵卒を投げたり倒したりあしらひながら、小手すねあ
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