ますが、昔の人が今の小説を読んで、主人公の結局《つゞま》る所がないと云ふ、「武士の浪人ありける。」から「八十までの長寿を保ちしとなん。」と云ふ所まで書いてないから分らないと云ふが、なるほど幼稚な目には、然う云ふ考へがするでせう。妹と背かゞみに於て、何故、お雪がどうなるだらうと、いつまでも心配で/\堪らなかつたことがありますもの。
 東京の新聞は余り参りませんで、京都の新聞だの、金沢の新聞に、誰が書いたんだか、お家騒動、附たり武者修業の話が出て居るんです。其中に唯二三枚あつて見たんです、四五十回は続いたらうと思ひますが、未だに一冊物になつても出ず、うろ覚えですから間違かも知れませんが、春廼家さんなんです、或ひは朝野新聞とも思ふし、改進新聞かとも思ふんだが、「こゝやかしこ。」と仮名の題で、それがネ、大分文章の体裁が変つて、あたらしい書方なんです。中に一人お嬢さんが居るんだネ、其のお嬢さんに、イヤな奴が惚れて居て口説くんだネ。(何かヒソ/\いふ、顔を赧《あか》くする、又何かいふ、黙つて横を向く、進んで何かいはうとする、女はフイと立つ。)と、先づ恁うです。おもしろいぢやありませんか。演劇《しば
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