うじん》は早速《さつそく》笑《わら》ひ聲《ごゑ》を交《まじ》へながら女《をんな》と何《なに》やら話《はな》しはじめたが、僕《ぼく》は至極《しごく》手持《ても》ち無沙汰《ぶさた》である。傍《そば》の窓《まど》をあけて上氣《じやうき》した顏《かほ》を冷《ひや》しながら暗《くら》いそとを見《み》てゐると、一|間《けん》ばかりの路次《ろじ》を隔《へだ》ててすぐ隣《となり》の家《うち》の同《おな》じ二|階《かい》の窓《まど》から、鈍《にぶ》い巷《ちまた》の雜音《ざふおん》と入《い》れ交《まじ》つてチヤラチヤラチヤラチヤラと聞《き》き馴《な》れない物音《ものおと》が聞《きこ》えて來《き》た。
「おいおい、あの音《おと》は何《なん》だい?」
暫《しばら》く靜《しづか》に聽耳《きゝみゝ》を立《た》ててゐた僕《ぼく》はさう言《い》つて、友人《いうじん》の方《はう》を振《ふ》り返《かへ》つた。いつの間《ま》にか彼《かれ》の膝《ひざ》の上《うへ》には丸顏《まるがほ》の女《をんな》が牡丹《ぼたん》のやうな笑《わら》ひを含《ふく》みながら腰《こし》かけてゐる。が、彼《かれ》はすぐに僕《ぼく》の指《ゆび》さす方
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