一卷《ひとまき》とすれば、近頃《ちかごろ》の仕合《しあは》せな新《あたら》しい麻雀《マアジヤン》好きの面面《めんめん》はすべからくそれ等《ら》の諸賢《しよけん》に敬意《けいい》を捧《さゝ》げて然《しか》るべきかも知《し》れない。

     6

 日本《にほん》の文藝的作品《ぶんげいてきさくひん》に麻雀《マアジヤン》のことが書《か》かれたのは恐《おそ》らく夏目漱石《なつめさうせき》の「滿韓《まんかん》ところどころ」の一|節《せつ》が初《はじ》めてかも知《し》れない。無論《むろん》、讀書人《どくしよじん》夏目漱石《なつめさうせき》は勝負事《しようぶごと》には感興《かんきよう》を持《も》つてゐなかつたのであらうが、それは麻雀競技《マアジヤンきやうぎ》の甚《はなは》だ漠然《ばくぜん》とした、斷片的《だんぺんてき》な印象《いんしよう》を數行《すうぎやう》綴《つゞ》つたのに過《す》ぎない。が、近代日本《きんだいにほん》のこの優《すぐ》れた文人《ぶんじん》の筆《ふで》に初《はじ》めて麻雀《マアジヤン》のことが書《か》かれたといふのは不思議《ふしぎ》な因縁《いんねん》とも言《い》ふべきで、カフエ・
前へ 次へ
全33ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南部 修太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング