附に不快な壓迫を感じた。その倦怠と不快な壓迫を遁れようとして盛に働いたみんなの惡戲性は、やがて疲れて來た。先生をからかつて苛立《いらだ》たせて得られる意地惡な面白味は、漸く薄れて行つた。そしてもつと現實的な飽き足りなさが、先生に對して感じられて來た。
「あんな先生に教はるのは損だ。」と、或る時首藤が云つた。「文法の一句が説明しきれないなんて、そんな馬鹿馬鹿しい教師があるもんか。」
「よつぽど頭が惡いな。」
「惡いとも、もう好い加減腦味噌が腐つちやつてらあ。」と、松川が云つた。
「然し、國語だつてしつかりやつとかなきやあ後悔するぜ。何處の入學試驗にだつて國語はあるからな。」と、一人が云つた。
「さうさ、馬鹿に出來るもんか。」と、級長の谷が云ひながら、足下の小石を蹴飛ばした。
「一體學問だつて、三年の時の大石さんの方がずつとあつたぜ。」と、また首藤が云つた。彼は先生の無學さを一番失望してゐた。
「あつたとも、まだあの人の方がましだつた。」
「だがね、學問があつたつてなくつたつて、あんな態度で教へられちやあ、不愉快で堪らないぢやないか。」と、私は反抗的な氣持で云つた。
「排斥しちやへ……」と
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