猫又先生
南部修太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)而《しか》も
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)調子|外《はづ》れの
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]んだ。
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高橋順介、それが猫又先生の本名である。
先生はT中學校の國語並に國文法の先生で、私達が四年級に進んだ年の四月に新任されたのである。而《しか》も、當然私達の擔任たるべく期待されてゐた歴史の杉山先生が、肺患が重つた爲めに辭任されたので、代つて私達のクラスを擔任されることになつた。杉山先生は若かつたが、中學校の先生には稀に見る程の温かな人格者で、而も深い學識を持ちながら淡々たる擧措《きよそ》が一同の敬愛の的となつてゐた。故にその辭任の原因が肺患と知つた時にも、私達は先生と離れるのを幸福と思はなかつた。そして一同涙ぐましい程失望した。猫又先生はこの失望の前に迎へられたのである。
講堂で催された
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