んまり露骨に奇々怪々だつたり、ふんだんに血潮やピストルが飛び出したり、厭《い》やに眼まぐるしく探偵や[#底本は「探偵の」]犯人の隱現出沒する探偵小説はほんとの面白味には乏しい。また別の意味で、例へば可成《かな》り世間を騷がしたと云《い》ふやうな、實際に起つた探偵事件が文章に書かれたとしても、一|體《たい》現實の事件には讀物的興味をそぐやうな無駄や、まはりくどいいきさつ[#「いきさつ」に傍点]などのあるのが普通だから、所謂《いはゆる》實説物などと云《い》つても、それが探偵小説としての面白さを増すためには、さう云《い》ふ無駄やいきさつ[#「いきさつ」に傍点]をはぶくと同時に、やつぱり空想や虚構が織りこまれなければいけないと思はれる。
さて、探偵小説の世界は空想的な、虚構のロマンスの世界であるが、新しい探偵小説には指紋《フインガアプリント》だの、顯微鏡《ミクロスコオプ》だの、化學分析《ケミカルアナリシス》だの、催眠術《メスメリズム》だの、犯罪骨相學《クリミナルフレノロジイ》だのと云《い》つた、實際的な科學的要素も色々に點綴《てんてつ》されて、一そう筋を複雜にし、興味を深めてゐるやうに思はれ
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