いふ人達も識りたいと思ひまして……」と、彼は私をぢつとみつめながら、詞《ことば》を途切つて、
「あなたはどちらから……」と、云ふ。三十四五の、何處か事業家とでも云つた顏立で、その態度の慇懃な内にも、何となく若若しい心の覇氣が感じられる。
「この夏北海道を旅行しまして、丁度、歸りがけなんです。」
「ははあ御旅行ですか、それは結構ですな。やつぱり東京の方から……」
「さうです。」
「何しろ好いお仲間が出來ました。Kと申します。何分よろしく……」と、彼は快活な聲で氣輕さうに云つた。そして幾度か燐寸《マツチ》を擦り消しながら、やつと煙草に火を點《つ》けると、歩調をとるやうにして狹い甲板を往き來した。私はそのまま詞を途切つて海を眺めてゐた。背後《うしろ》の蓙の上で絶え間なく笑ひを交へながら何か話し合つてゐる船客達の聲が、蜂の唸りのやうに耳を掠めて行つた。
殉教者の惱み――私は想像の中にトラピストの人達の生活を描いてみた。そしてそれは私が彼等に對して全くの Stranger であると云ふ點から、今其處に近づかうとしてゐる私の心持を色色な意味に不安ならしめた。と同時に、何か不思議なものに觸れると云
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