構圖《こうづ》や形式《けいしき》に對する缺點《けつてん》を蔽《おほ》[#ルビの「おほ」は底本では「お」]ふ丈けに、作の内容が深《ふか》い爲《た》めに、この作の有《も》つ尊《たふと》さを主張《しゆちやう》して止まなかつたのです。こゝらにも各人が作の價値《かち》を批判《ひはん》する心持の相違《さうゐ》があると見えますが、「和解[#「和解」に白三角傍点]」に描《ゑが》かれてゐる作のテエマ、即ち父と子の痛《いた》ましい心の爭鬪《さうとう》に對して働《はたら》いてゐる作者の實感《じつかん》[#ルビの「じつかん」は底本では「じんかん」]、主人公の心の苦悶《くもん》に對する作者の感情輸入《アインヒウルング》の深《ふか》さは、張り切つた弦《ゆづる》のやうに緊張《きんぢやう》[#ルビの「きんぢやう」はママ]した表現《へうげん》と相俟つて、作の缺點《けつてん》を感《かん》じる前に、それに對して感嘆《かんたん》してしまひます。その父《ちゝ》と子の心と心とが歔欷《きよき》の中にぴつたり抱き合ふ瞬間《しゆんかん》の作者《さくしや》の筆には、恐ろしい程|眞實《しんじつ》な愛《あい》の發露《はつろ》を鋭《するど》く
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