の農夫や漁師達の十二三人が不安らしい眼差でグスタフソン警視達と向ひ合せに腰掛けてゐる。早速はじまつた證人調べだつた。先づ最初の現場發見者のカアルソンとロフベルグがその經過をざつと話すと、警視はカアルソンの顏を見守りながら、
「木曜の夕方何度も電話を掛けたといふが、いつたい何の用でかね?」
「なアにね、ちよつと相談事に行かうと思つたんです。實はゼッテルベルグさんが抵當の事でいい智慧を貸して下さる筈でしたが。」
「どうだ、水曜か木曜にあの老人に會やアせんかね? またこの近所へやつて來たことはなかつたかね?」
「いいえ、もう決して‥‥」
 率直なカアルソンの詞に打ち頷くと、警視はその隣の漁師のダアルベルグに視線を移した。と、途端に自分から進んで口を開いて、
「さう言やア思ひ出すことがありますよ。水曜の夕方己が漁から戻つてくるとね、別莊の方へ歩いてく奴を見ましたつけ‥‥」
「ふウん、そりや島の者だつたかね?」
「さア、分らないね。何しろずいぶん遠くの事だつたで‥‥」
 警視は鋭い眼で暫くダアルベルグの顏を探るやうに見詰めてゐたが、やがて次のペタアソンの方へ向きなほつた。
「さうさね、實ア己もこ
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