死の接吻
――スウェーデンの殺人鬼――
南部修太郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)死體收容室《モルグ》で

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その間に|夜の飾衣《ナイト・ガウン》を着た

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]

/″\:濁点付きの二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ずる/″\と滑り落ちて
−−

    猫の唸聲
「ふウん、臺所に電氣がついてる‥‥」
 凍りついた雪の道に思はず足を止めて、若い農夫のカアルソンは宵闇の中に黒く浮んでゐる二階建の別荘の方へおびえたやうな視線を投げた。
 千九百三十二年三月四日、ちやうど金曜の晩のこと、ストツクホルムから程近いモルトナス島のゼッテルベルグ老人の別荘へ昨日から度々電話を掛けてみるのだが一向に返答がない、日頃からごく懇意にしてゐる老人のことなのでひどく氣に掛かつて、その日の仕事をやつと片附けると、カアルソンは自分
次へ
全36ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南部 修太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング