てしまつた。
「どうした? な、何が見えたんだ」
近寄りざまにロフベルグはカアルソンの肩を劇しく搖す振つた。
「た、大變だ。ゼッテルベルグさんが竈の脇の血溜りに倒れてる‥‥」
顏青ざめ、がたがた顫へながら、カアルソンは息詰まるやうな聲で叫んだ。
「そして、そして、料理臺の上にやア頭をぐしやぐしやに割られた女が突つ伏してる。ち、畜生つ、猫の野郎め、その脇に突つ立つて己をぢつと睨みつけやがつたよ。」
慘劇の現場
夜の十時、グスタフソン警視がストックホルム警察廳の自室で煙草をふかしてゐると、あわただしくはいつて來たのは主任警部のソオルで、いきなり呶鳴りつけるやうに、
「ただ今モルトナス島の派出所からえらい事件を報告して來ました。ゼッテルベルグと申す老人夫婦とその義理の妹にあたるヘドストロムといふ細君が殺害されたさうです。グスタフスブルグ署のジヨンソン署長とベルントソン醫師は現場の別莊へ急行したと言ひますが、わたしもこれからすぐ出掛けようと思ひます。」
首も埋まりさうな厚ぼつたい外套の釦をせかせかとはめながら、ソオルは言つた。
「宜しい。無論、僕も一緒に行かう。とにかく現在ま
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