たものか誰がそこに置いたのか、給仕人達も手洗所の番人も一向氣が附かなかつた由を説明した。
「切斷したばかりの新品だな。」
と、ソオルは愼重に管を調べながら、
「それにこの包紙はたしかにこいつを買つた店の物だね。こりやア調べがつくぞ。一つ電話を貸してくれ給へ。」
ソオルは再度グスタフソンを電話口に呼び出して發見品のことを報告した。すると、警視はまた何かの命令を與へたらしかつた。
「畏りました。わたくしから十分御注意なさるやうにお傳へしませう。」
と答へて、ソオルは管の指紋と包紙の出所を調べることを警視に依頼した。
數分の後、ソオルを乘せた自動車はまだ鎭まらぬ吹雪を衝いてストツクホルムから程近い有名な大學都市のウプサラへ再び急いでゐた。そこには殺された百萬長者の後嗣《あととり》で、貴公子風な若男爵のフレデリック・フオン・シイドウが學生生活を送つてゐる。その青年を殺人狂の毒手から守ること、その口から何か犯人の手掛りを掴むこと、それがグスタフソンのソオルに與へた命令だつた。
二十分ほどで自動車はウプサラ警察署の前に止まつた。そして、緊張の面持でソオルが署長室へ駈け込んだその時、署長の
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