ン警視を呼び出し、いろいろの發見や自分の斷案をてきぱきと語り傳へた。すると、今度は警視の方で何か話し出した樣子だつたが、ソオルの顏は急に緊張した。
「は、は、早速出掛けることにします。」
 と答へて、ソオルは手荒く受話器を掛けるや否や部長に張番のことを命じ、ひどく氣ぜはしげな樣子で門口を出て行つた。

    青天の霹靂
 吹雪の夜、ソオルの乘つた警察自動車は十五分ばかりでストックホルムの中心地、上流人士の集ふ料理店テグネルの電光映え輝く玄關に横づけになつた。早速支配人に面會を求めると、優雅な音樂の響き漂ふ大食堂の方を眺めながら、ソオルは溜間《ロビー》の一隅で首を長くしてゐた。と、やがて支配人が姿を見せて、
「これはこれはソオル樣で? そのお品はたしかに事務室の方に保管してございます。」
 案内されて事務室へはいると、机の上にハトロン紙で包んだ物が横たへてあつた。可成りな重さ、開いてみると、長さ半メートル餘の鐵の管で、綺麗に拭ひ取らうとした形跡が見えたが、端の方になほ血が殘つてゐた。
「三十分ほど前でしたか、殿方の手洗所でこの品を見つけましたんで‥‥」
 と言つて、支配人は誰が持つて來
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