なく十三歳の可憐なモニカ・シユワルツとボオイの制服を着た若者を連れて引き返して來た。
「お孃ちやん、どういふことがあつたか、すつかり話して下さいな。」
と、ソオルは優しく問ひ掛けた。
すつかりおびえきつてゐるモニカは咽び泣きしながら、やつとのことで口を開いた。
「あたし四時に學校を引けて來たの。そしてお玄關の呼鈴を押したんだけど、誰も返事しないんだもの、變だと思つたわ。だつて、その時間にはエツバもカロリイナもきつとおうちにゐる筈なのよ。」
と、ちよつと小首をかしげて、
「どうしていいか分んないから、あたし四階のヘイマンさんとこへ行つて譯を話したの。さうすると小母樣がこのボオイさんにそ言つて鍵をあけさせて下すつたわ。そいから應接間へはいつて行くと、叔父樣が顏を血だらけにして安樂椅子に横んなつてらつしやるんだもの。あたしきやアつてつて‥‥」
瞬間、誰しも思はず息を呑んだ。やがてソオルは穩かな、いたはるやうな調子で、
「叔父樣が誰かに會つたなんておつしやりはしなかつた? つまりお客樣か何か‥‥」
「そんなこと、あたし分んないわ。」
と、モニカはかぶりを振つた。ソオルはボオイの方へ向
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