室の方へ出て行つた。
と、其處へ手術室の準備を終つたらしい水島があわたゞしく這入つて來た。
『消毒が濟んだら直ぐに取り掛かるよ‥‥‥』と水島は云つた。愈※[#二の字点、1−2−22]だ――と云ふ衝撃《シヨツク》が私をぎくりとさせた。
『そりやあさうと手術には立ち會へまいか‥‥‥』と、私はお前一人を恐ろしい手術室に閉ぢ込められてしまふ不安を急に感じて云つた。
『さ、それは止めたが好い。そして、僕達を信じてゐてくれ給へ‥‥‥』と、水島は直ぐに遮つた。
『何故だ‥‥‥‥』
『一體病院の規定から云つてもそれは禁じてある。と云ふのは、手術と云ふものは、あんまり氣持の好いものぢやない。だから、可成り氣の強い人でも素人は平氣で見てはゐられない。大概腦貧血を起すか、目を※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]すかだ。ひどいのになると、穢い話だが嘔吐を催す。そんな事になると、手術以外に立會人の介抱で一騷ぎしなければならないからね‥‥‥』
『然う、僕にはそんな事はあるまい。是非立ち會はせてくれ‥‥‥‥』
『さ、それが、大抵の人がさう云ふんだ‥‥‥‥』
『だが、僕は爲事の點から云つても、それには少し慣れ
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