疑惑
南部修太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)眞面《まとも》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|來たね《シユラアフ・ズヒテン》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)引つ掻き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]されるやうな

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)途切れ/\
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[#天から18字下げ]――水野敬三より妻の藤子に宛てた手記――
 昨日、宵の内から降り出したしめやかな秋雨が、今日も硝子戸の外にけぶつてゐる。F――川の川音も高い。町を挾んだ丘の斜面の黄ばんだ木の葉の色も急に濃くなつたやうだ。J――峠から海の方へ展がる山坡に沿うて、雨を含んだ灰色の雲が躍るやうに千切れては飛び、飛んでは千切れて行く。海の沖には風が騷いでゐるのかも知れない。とに角私が此處へ來てから暗い空模樣が今日で五日も續いてゐるのだ。著いた日の夜出した繪葉書はもうお前の手に屆いたことと思ふ。が、夏の終りに病後の一
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