算的《ださんてき》なやり方《かた》は大嫌《だいきら》ひだ。なアに、その時《とき》はまたその時《とき》でどうにかなる。いや、きつと、どうにかするよ」
「だけど、あなたのそのどうにかするつていふことほど、いつも當《あ》てにならないのはないぢやありませんか」
「然《しか》し、お互《たがひ》に日干《ひぼ》しにもならない所《ところ》を見《み》ると、たしかにどうにかなつて行《ゆ》きつつあるぢやないか」
「あア、あなたにはとても叶《かな》はない」
 妻《つま》はふつと笑《わら》ひ出《だ》した。
「何《なに》しろ何《なん》だ、そんな世帶《しよたい》染《じ》みた事《こと》を言《い》ふなアよしてくれ。聞《き》いただけでもくさくさするよ」
 と、夫《をつと》は調子《てうし》に乘《の》りながら、
「貧乏《びんばふ》畫家《ぐわか》の妻《つま》として三|年間《ねんかん》で三百|圓《ゑん》溜《た》めたあたしの經驗《けいけん》か?」
「厭《い》や、厭《い》や、そんなに茶化《ちやくわ》しておしまひになるの‥‥」
 妻《つま》はちよつと夫《をつと》を睨《にら》むやうにしながら、
「ほんとにあたし眞劍《しんけん》に言《い》
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