畫家とセリセリス
南部修太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)癖《くせ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)十|日《か》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)※《うそ》[#「※」は、「嘘」の「くちへん」が「ごんべん」、第4水準2−88−74、87−6]
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 それが癖《くせ》のいつものふとした出來心《できごころ》で、銀座《ぎんざ》の散歩《さんぽ》の道《みち》すがら、畫家《ぐわか》の夫《をつと》はペルシア更紗《さらさ》の壁掛《かべかけ》を買《か》つて來《き》た。が、家《うち》の門《もん》をはひらない前《まへ》に、彼《かれ》はからつぽになつた財布《さいふ》の中《なか》と妻《つま》の視線《しせん》を思《おも》ひ浮《うか》べながら、その出來心《できごころ》を少《すこ》し後悔《こうくわい》しかけてゐた。始終《しじふ》支拂《しはら》ひに足《た》らず勝《が》ちな月末《つきずゑ》までにもう十|日《か》とない或《あ》る秋《あき》の日《ひ》の夕方《ゆふがた》だつた
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