ると、
「だけど、あなたは、ほんとにお氣樂《きらく》ね」
「何《なに》が?」
「何《なに》がつて、もう少《すこ》し家《うち》のことや子供《こども》のことを考《かんが》へて下《くだ》すつたつていいと思《おも》ふわ」
「考《かんが》へてないと思《おも》つてるのか、君《きみ》は?」
 と、夫《をつと》も少《すこ》し顏色《かほいろ》をあらためた。
「だつて、考《かんが》へていらつしやらないも同然《どうぜん》だわ。今日《けふ》はもう二十日《はつか》過《す》ぎよ。それに、こないだから、子供《こども》の洋服《やうふく》や靴《くつ》をあんなに買《か》つてやりたいつて言《い》つてたぢやないの?」
「それがどうしたと言《い》ふんだい?」
 夫《をつと》はふてくされた氣持《きもち》で言《い》ひ返《かへ》した。
「まア、空《そら》とぼけるなんて卑怯《ひけふ》だわ。そ、そんな贅澤《ぜいたく》な壁掛《かべかけ》なんかを氣《き》まぐれにお買《か》ひになる餘裕《よゆう》があるんならつて言《い》ふのよ」
「だから言《い》つてるぢやないか。仕事《しごと》に使《つか》ふんだつて‥‥」
「※《うそ》[#「※」は、「嘘」の「く
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