たま》と前半身《ぜんはんしん》が不思議《ふしぎ》な顫動《せんどう》を起《おこ》しはじめた。
「まア、をかしい、何《なに》してるの?」
と、夏繪《なつゑ》が頓狂《とんきやう》な聲《こゑ》を立《た》てた。
「しつ、穴《あな》の中《なか》へ卵《たまご》を生《う》みつけてゐるんだよ。そしてね、來年《らいねん》の春《はる》になつて卵《たまご》がかへると蜘蛛《くも》が蜂《はち》の子供《こども》の御飯《ごはん》になるのさ」
と、話《はな》し聞《き》かせてゐる内《うち》に、夫《をつと》の頭《あたま》の中《なか》には二三|日《にち》前《まへ》の妻《つま》との對話《たいわ》が不意《ふい》に思《おも》ひ浮《うか》んで來《き》た。夫《をつと》は我《われ》知《し》らず苦笑《くせう》した。蜂《はち》の眞劍《しんけん》さが、その子供《こども》に對《たい》する用意周到《よういしうたう》さが何《なに》か皮肉《ひにく》に胸《むね》に呼《よ》びかけてゐるやうな氣持《きもち》だつた。
不思議《ふしぎ》な顫動《せんどう》が何《なに》か必死的《ひつしてき》な感《かん》じで二三|分間《ぷんかん》つづくと、蜂《はち》はやがて穴
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