《りん》二|厘《りん》と、穴《あな》は小《ちひ》さな蜂《はち》の體《からだ》を隱《かく》すほどにだんだん深《ふか》く掘《ほ》られて行《い》つた。
「パパ。あの蜂《はち》何《なに》してるの」
と、息《いき》を凝《こ》らしてゐた夏繪《なつゑ》が低《ひく》く尋《たづ》ねかけた。
「うん、今《いま》あの穴《あな》の中《なか》へ子供《こども》を生《う》みつけるんだよ。」
と、夫《をつと》は何《なに》か胸《むね》を打《う》つものを感《かん》じながら小聲《こごゑ》に答《こた》へた。
全《まつた》くわき眼《め》も振《ふ》らないやうな蜂《はち》の動作《どうさ》は變《へん》に嚴肅《げんしゆく》にさへ見《み》えた。そして、瞬《またた》きもせずに見詰《みつ》めてゐる内《うち》に、夫《をつと》はその一|心《しん》さに何《なに》か嫉妬《しつと》に似《に》たやうなものを感《かん》じた。すぐ夫《をつと》は傍《そば》から松葉《まつば》を拾《ひろ》ひ上《あ》げて穴《あな》の中《なか》をつつ突《つ》いた。と、蜂《はち》はあわてて穴《あな》から出《で》て來《き》たが、忽《たちま》ち松葉《まつば》に向《むか》つて威嚇的《
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