空洞《うつろ》を叩《たた》くやうな兵士達《へいしたち》の鈍《にぶ》い靴音《くつおと》が耳《みみ》に著《つ》いた。――歩《ある》いてるんだな‥‥と思《おも》ふと、何時《いつ》の間《ま》にか知《し》らない女《をんな》の笑《わら》ひ顏《がほ》が眼《め》の前《まへ》にはつきり見《み》えたりした。仕舞《しまひ》には、そのどつちがほんとの自分《じぶん》か區別《くべつ》出來《でき》なくなつた。そして、時時《ときどき》我知《わたし》らずぐらぐらとひよろけ出《だ》す自分《じぶん》の體《からだ》をどうすることも出來《でき》なかつた。
何分《なんぷん》か經《た》つた。突然《とつぜん》一人《ひとり》の兵士《へいし》が私《わたし》の體《からだ》に左《ひだり》から倒《たふ》れかかつた。私《わたし》ははつとして眼《め》を開《ひら》いた。その瞬間《しゆんかん》私《わたし》の左《ひだり》の頬《ほほ》は何《なに》かに厭《い》やと云《い》ふ程《ほど》突《つ》き上《あ》げられた。
「痛《いた》い、誰《だれ》だつ‥‥」と、私《わたし》は體《からだ》を踏《ふ》み應《こた》へながらその兵士《へいし》を突《つ》き飛《と》ばした。と
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