一兵卒と銃
南部修太郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)霧《きり》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六|月《ぐわつ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)もともとだらし[#「だらし」に傍点]のない

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)度々《たび/\》あつた。
−−

 霧《きり》の深《ふか》い六|月《ぐわつ》の夜《よる》だつた。丁度《ちやうど》N原《はら》へ出張演習《しゆつちやうえんしふ》の途上《とじやう》のことで、長《なが》い四|列《れつ》縱隊《じうたい》を作《つく》つた我我《われわれ》のA歩兵《ほへい》聯隊《れんたい》はC街道《かいだう》を北《きた》へ北《きた》へと行進《かうしん》してゐた。
 風《かぜ》はなかつた。空氣《くうき》は水《みづ》のやうに重《おも》く沈《しづ》んでゐた。人家《じんか》も、燈灯《ともしび》も、畑《はたけ》も、森《もり》も、川《かは》も、丘《をか》も、そして歩《ある》いてゐる我我《われわれ》の體《からだ》も、灰《はひ》を溶《とか》したやうな
次へ
全26ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南部 修太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング